弦楽器工房オフィス・ドルチェでは、古典音律による音楽の普及をめざして、
此れまで、エンジェルスハープ・ケルナーギターを開発、製作してきました。
また、さまざまなジャンルの曲を古典音律で演奏する中で、滑らかな旋律性と心地よい
和声が得られ、12等分平均律による音楽とは全く違った感性を覚える事を体現してきました。。
そこで、さらなる次の段階への挑戦を進めてゆきたいと思います。
エジェルスハープやケルナーギターはいずれも撥弦楽器でしたが、より純正協和音のハーモニー
を充実させるにはどうしても擦弦楽器の参加が必要と考えました。
そこで馬頭琴を15年間製作してきたノウハウを活用して、3弦で和音を出せる馬頭琴を考案しました。
これに、ケルナー音律で正確に演奏出来るようフレットを取り付けます。
このフレッティングはケルナーギターのノウハウを応用したもので、チューニングも高音側から
E・B・Gとしました。
この3度4度チューニング法ですと、3弦での和音フィンガリングが大変容易になります。
今回は、製作工程を画像を交えながら説明していこうと思います。
細かな工程の画像は省略してありますが、ご了解下さい。
まず第一工程です。
擦弦楽器を全音域バランス良く響かせるには表裏甲板をアーチ状に削り出す必要があります。
次の写真が削り出した表甲の側部から撮影したものです。
アーチの高さにはいろいろな考え方がありますが、高いほうが発生する倍音成分が豊か(複雑)になり、
艶のあるブリリラントな高温が発生するというのがわたくしの見解です。
アーチの高さは約29mm有ります。今回は30mm厚の国産ヒバ材(張合せナシ)から削り出しています。
厚サは中央で4mm、外周部で2.8~3mmになります。
完全乾燥からシーズニングを経た材料ですが、それでも2週間程掛けてゆっくりと削り出してゆきます。
削られることで水分が少しづつ抜けて、ゆがみ・たわみ等の変形がどうしても生じますので、それを観察し
修正しながら作業を進めます。
最初に表面の曲面を決め、次に裏面を削り出し厚さを決めてゆきます。
工具はヴァイオリン用の西洋鉋(カンナ)ではなく、日本式の小型丸鉋と大小の丸刀を使います。
裏面が削り終えたら、バスバーを取り付けます。
バスバー(力木)の役目は、駒で受け取った弦振動を速く甲板の外周部まで伝える事と、駒からの圧力
による甲板の変形を防ぐ事です。
左右の響穴(サウンドホール)は削り出しをしてから加工します。
モンゴル風のデザインは大変繊細で手間のかかる作業です。
工具は糸鋸(イトノコ)と先端の細い小刀を使います。
正面から見て、木口が目立たないように、ハの字型に奥の方を多めに削るのと、純目・逆目を見て
削り跡が滑らかになるよう加工するのがポイントです。
写真の小刀は、かれこれ20年使っているもので先端が細く、モンゴル風のサウンドホールの細かい
部分の仕上げには欠かせない工具です。
同様に裏甲を加工して行きます。
裏甲は馬頭琴の場合、表甲のように強いアーチ状にはせず若干膨らみが解る程度にします。
裏甲と側板は国産の桐材(1枚もの単板)を使いました。
メイイプルより、柔らかくまろやかな低音にしたかったのが理由です。
いつも心がけている事ですが、設計の段階でどんな響き・音色をめざすか、イメージを持つ事
が大切だと思っています。
製作日記(1)はひとまずここまでとします。
ご覧いただきありがとうございました
次回に続きます。